〈グロット・リトリート・西窯頭〉
農村らしさを継承するやわらかな形のレンガ建築
A( )VOIDが中国の農村活性化プロジェクトの一環として設計した〈グロット・リトリート・西窯頭〉
〈グロット・リトリート・西窯頭(Grotto Retreat Xiyaotou)〉は、中国の過疎化した農村を共同農園とする、活性化プロジェクトの一環として建てられたリトリート施設です。
現地のプリミティブな住まいから着想を得た「グロット」という双曲面のボリュームと木の橋で構成され、公私が共存するコミュニティとなるよう計画されています。
中国の設計事務所A( )VOIDが設計しました。
(以下、A( )VOIDから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)
取り残された村の活性化
「空洞村」は中国の農村によく見られる現象である。村の先住民のほとんどが新たな農村の住宅地に移り住み、荒廃した家屋が残されている。
農村活性化プロジェクトを進めるFAホームステイ(Fortune Art Homestay)は、過疎化が進む中国・蔚県(Yu County)の100の村から、切り絵や木工芸といった文化遺産を考慮し西窯頭村(Xiyaotou Village)がプロジェクトの第1弾として選出された。
村は共同農園に生まれ変わり、宿泊施設や地元食材を使ったサービス、活動を通じて村人に収入を提供している。
西窯頭村の農村活性化プロジェクトは、2018年のFA Emerging Architect Awardをきっかけにスタートしたものであり、〈グロット・リトリート・西窯頭〉は12の受賞デザインのうちの1つである。
農村と都市を掛け合わせたコミュニティ
デザインコンセプトは、農村における「知人社会」と都市における「他人社会」という、ヒューマンネットワークの本質的な違いから出発している。
先住民の住んでいた洞窟住居から着想を得たプライベート空間「グロット(窯、小さなほら穴)」と、そのグロットを木の橋というパブリック空間がつないでいる。
洞窟住居というプリミティブな形態を現代的な生活様式の中に位置付けることで、公私が共存するコミュニティとなるよう計画した。
木の橋は、洞窟住居の縦横比に基づいた4×6mのグリッドで構成されている。このグリッドは通路レイアウトの基調となり、新しい建築群を精神的な意味でも支えている。
〈グロット・リトリート・西窯頭〉は、周囲の風景を眺めることができる木の橋、双曲面のファサード、松材の柱、コールテン鋼で縁取られた建具という複合的な構成となっている。
「グロット」ユニットは敷地の他の作品と調和するよう、散在するボリュームと双曲面の形状、さまざまなスケールの開口部、地域の材料と工法を用いた計画とした。
高さ7mの天井高さを持つ「グロット」の天窓は、西暦200年代の詩人である劉玲の詩「天と地を家とし、家を衣とする」になぞらえ、居住者に空間の垂直性に集中するよう促すものである。
また天窓は、陽の傾きを敏感に感じ取り、「夜明けから夕暮れまで働く」という農村のリズムに合わせるための設計でもある。冬は天窓から入ってきた熱を二重のレンガの壁で蓄熱し、夏はユニットの形状と開口部により生じた煙突効果で熱を排出することができる。
ファサードから突き出ているレンガは、職人がレンガ壁を作成する際に竹の足場の仮支持として使用されたものである。
双曲面に投影される突起や木橋の影は、陽の傾きによって変化し、刹那的な時間を生み出している。
Japanese writing translated by tecture株式会社